初めに
2021年に入ってから、MS社がPowerBIに関していくつかの新機能を公開しました。その中に、個人的には下記の二つ新機能が魅力的ですが、意外に知らなかった方が多いので、サンプルを挙げて紹介させていただきたいと思います。
■スモール マルチプル
■カードのドリルスルー
新機能の概要説明
- スモール マルチプル(小さな多数分け)
一つのビジュアルを、カテゴリー項目を指定することにより複数枚で分割する機能です。
今までデータソース側にカテゴリーを増減することに対してメンテナンス作業に多くの時間を取られています。今回のSmall Multiples機能は一つのビジュアルで複数の要素を表示できるため、デザイン、管理面で今までよりも優れています。
- カードのドリルスルー
折れ線グラフや縦棒グラフからのドリルスルー機能を、カードビジュアルでもサポートするようになりました。
今まで、複数項目を選択した状態でのドリルスルーは不可能でしたが、カードのドリルスルー機能を利用すれば実現可能になります
サンプル画面の実現内容
今回の記事サンプルでは、前回の記事に作成したデモセンサーのグラフを継続で利用します。
※前回の記事はまだご覧にならなかったら方は、こちら『PowerBIカスタムビジュアル作成』へどうぞ。
『スモール マルチプル』機能を利用して、センサーデータの推移データを機器ごとに分割して表示するようになります。
また、機器ごろに分割されたグラフから、『カードのドリルスルー』機能を利用して、二つ機器の指定時刻のセンサー値を比較する画面に遷移することを実現していきたいと思います。
スモールマルチプルによりグラフ分割表示の実現
まず、PowerBI Desktopを起動し、前回記事にて作成したセンサーデータ推移表示レポートを開きます。
右側のフィールドパネルから、「SensorData」データセットの「equitment_id」フィールドを選択し、視覚化パネルの「スモールマルチプル」エリアにドラッグアンドドロップします。それで、元々一枚の折れ線グラフを、4分割(2行2列)されるように表示されす。
書式パネルから最大分割6×6まで分割数を指定することが可能です。
また、カテゴリーの数は分割数(行×列)を超過し、分割されたグラフを表示エリアに収まらなくなる場合は、スクロールバーが自動的に表示され、画面をスクロールしながらグラフを参照できます。
さらに、複数のカテゴリーを指定し、グラフがさらに分割して表示することが可能です。
複合グラフにもスモールマルチプル機能を利用できるようになりました。
※機能プレビュー公開時に複合グラフにスモールマルチプル非対応でした。
カードより複数条件でのドリルスルーの実現
まず、ドリルスルー先のページとして、「機器別時系列データ推移状況」画面を作成します。
①フィールドパネルに下記の項目設定を行います。
軸:「trans_timestamp」データの転送時刻
値:「Sensor1」センサー1の転送値
「Sensor2」センサー2の転送値
「Sensor3」センサー3の転送値
スモールマルチプル:「equipment_id」機器単位でグラフを分ける
②ドリルスルーフィルタに下記の項目を追加します。
「equipment_id」:機器ID
「xhour」:年月日時間までの日付項目
※「xhour」は、列を追加して下記の式で作成します。
xhour = DATE([year], [month], [day]) + TIME([hour], 0, 0)
次は、メインページにカードビジュアルを追加し、ドリルスルーための設定を行います。
①デモセンサーのデータ推移グラフを、時間毎の最大値を表示する積み上げ縦棒グラフに変更します。
①積み上げ縦棒グラフに、特定な機器に対して、特定な時間を指定して、「機器別時系列データ推移状況」へドリルスルーします。
では、二つの機器と異なる時間を指定して、同じ操作手順でドリルスルーできるかを確認します。
結果、複数データポイントを選択された場合、通常のドリルスルーができないことが分かりました。
これからは、カードビジュアルを通して、複数データポイントを指定してもドリルスルーする方法を紹介します。
①ビジュアルパネルから「カード」ビジュアルを画面に追加します。
②フィールドパネルから、任意の集計項目(デモでは「Sensor1」)を選択し、カードのフィールドに設定します。
また、ドリルスルー先のページ「機器別時系列データ推移状況」に、「Sensor1」項目をドリルスルーフィルターにも追加します。
メインページに戻し、複数のデータポイントを選択した状態で、カードに右クリックし、ドリルスルーメニューが表示されるようになりました。
そこで「機器別時系列データ推移状況」をクリックし、ページがドリル先へ遷移されることを確認できます。
ドリルスルーされた「機器別時系列データ推移状況」画面に、複数選択したフィルター条件(データポイント)でデータが正しく絞り込まれることを確認できます。
おわりに
今回は、 PowerBIの二つ新機能「スモールマルチプル」と「カードのドリルスルー」を、サンプル画面のハンズオンにてご紹介させていただきました。
これらの有用な新機能を使いこなせばグラフ表現のバリエーションが増えますので、実の業務運用にもぜひご活用いただければと幸いです