企業を成功させるための重要な側面は、企業がその利害関係者のために生み出した価値を維持および強化する能力です。これらは顧客中心のアプローチに従うビジネスモデルを採用することで実現できますが、これにはエンドユーザー、パートナー、顧客、そして業界のニーズに適応するための拡張性と柔軟性を有するエコシステムの再設計が含まれます。
進化するハイブリッドクラウド戦略では、デザイン思考、効率、クロスプラットフォーム、モビリティを重要な要素として組み込む必要があります。成長を目的として、またコスト削減を目的として、企業は、ビジネスプロセスの改善、成果主導のシステム構築およびクラウド、マルチクラウドおよびハイブリッドクラウドの採用により、カスタマージャーニーに基づいた製品/サービスの再設計を検討します。
ハイブリッドクラウドの採用は、ほとんどの企業が「やることリスト」に載せ、継続的に進捗状況を追跡する重要な優先事項の1つです。これはビジネスモデル、KPI、顧客のデジタル化、ITの成熟度、アプリケーションの改修・適応、戦略的整合性などによって異なります。企業におけるクラウド化の検討では、オンプレミスアプリケーションとクラウドホストアプリケーションの適切なバランスを継続的に模索する必要がありますが、依存性の高い現在の業務プロセスの分析が欠かせません。
本稿「ハイブリッドクラウド環境構築 業務分析編」では、企業が進化するハイブリッドクラウド戦略を持つために重要なビジネス推進要因と業務分析要素について取り扱います。
- クラウド化は目的地ではなく、旅である
- 優れた技術でビジネスモデルを構築し、ビジネス価値を最大化するには?
- ハイブリッドクラウドで差別化を生み出すのは業務プロセスの革新・改善そのもの
- 積極的な差別化が実現できる業務領域を確認し、自社業務を分析する
クラウド化は目的地ではなく、旅である
すでに利用している情報システム環境が、一部クラウド化されている、あるいはクラウド化に向けて実証を進めているようなら、あなたの組織は最初の大きな一歩を踏み出したこととなるでしょう。
*参考 総務省「通信利用動向調査」 クラウドサービスの利用状況/クラウドサービスの効果
クラウドへの投資はどの組織にとっても簡単な決断ではありません。現在の自社のビジネスケース、事業計画においてクラウド化が適切か?適切であるなら、クラウドの導入だけでなく、クラウドを積極的に利活用する企業文化の定着、醸成に向けて関連する多くの活動が求められるからです。
クラウド化とは目的地ではなく旅であり、おそらく、その過程は皆さんの組織に変化を起こすためのものです。
クラウドへの移行を積極的に進めている(クラウドファースト)、クラウドありきでビジネスモデルを構築している(クラウドネイティブ)などいずれの属性の組織にかかわらず、クラウドを最大限に活用すれば、幅広いビジネス上のメリットが得られます。しかし、全ての業務の可能性を評価し、組織が直面する市場環境に合わせて、システム環境においても最適なものを決定することは簡単なことではありません。
優れた技術でビジネスモデルを構築し、ビジネス価値を最大化するには?
クラウドへの初期投資では、大量の業務上の要望・要求事項が上がってきます。次のステップで考えられることは何でしょうか?市場は従来想定通りの状態か、それとも変化・進化しているか?パンデミックにより、組織のクラウドおよび先進的な技術の採用は進んだか?競合他社もクラウド移行を果たし、同じクラウドサービスプロバイダー(CSP)に移行しているであろうことにも留意すべきです。競合他社もまた、おそらく同じツールと技術を活用しているからです。
では、どのように差別化し、自社独自の技術的利点に基づいて、ビジネスモデルを維持し続けるべきでしょうか?その問いに加え、リリースされてから何年も経ったクラウドサービスの複雑さや選択肢の多さから、自社組織にとってのビジネス成果とKPIをクラウド投資に合わせて調整し、確実に成果を上げる必要もあります。
エンドユーザー、パートナー、顧客を含むクラウドの利害関係者は既に洗練されたユーザー体験や技術、業務知識・経験を有しています。クラウド採用の過程で、エンドユーザーの体験に驚きの変化や、パートナー、顧客企業において業務効率の改善がはっきりと見えたなら、それは仮想化がかつて果たしたビジネスと情報システムのイノベーションと同様の効果をもたらすことにつながります。
オンプレミスの設備投資は主に専用の情報システム設備とデータセンターへの投資に関するものでした。一方、クラウドは、技術の標準展開とリソースの共同利用を促すことによって技術面、コスト面で利用時の参入障壁を低くし、ほとんどの組織のビジネスプロセスを技術によって促進します。
組織、エンドユーザー、または顧客は、多数の利用可能なクラウドサービスを活用することができるのは確かなことですが、クラウドサービスプロバイダー(CSP)が提供するネイティブなアプリケーションサービス、それをカスタマイズするシステムインテグレーター(SI)、パートナーが提供するサードベンダーアプリケーションなど、関連・付帯するツールは無秩序に広がっています。
この諸条件、環境のもと、必要な問いは「クラウド投資により、応答性、拡張性、耐久性に優れた技術でビジネスモデルを構築し、変革を加速し、ビジネス価値を最大化するには?」です。
ハイブリッドクラウドで差別化を生み出すのは業務プロセスの革新・改善そのもの
「変革を加速し、ビジネス価値を最大化」する観点から見れば、組織の優先順位、目標、および固有の市場状況の観点から利用可能な選択肢を評価し、それに応じてクラウド投資を再考する必要があります。初期段階から次のクラウド投資の段階では、コスト効率、統合化、または既存のデータセンター依存の情報システム・設備の出口戦略の検討へと進みます。検討に至る最大の動機付けは、ビジネスの成長、敏捷性の付加、そして顧客体験の向上です。また、市場投入までの時間短縮、新しい収益チャネルの新設、またコンプライアンスの維持にまで及ぶ場合があります。
「応答性、拡張性、耐久性に優れた技術でビジネスモデルを構築」する観点から見れば、組織は単一のCSPが提供するクラウド依存を避け、マルチクラウドまたはハイブリッドクラウドを検討します。
マルチクラウドに加え、パブリッククラウド、プライベートクラウド、自社内のオンプレミス環境を統合したハイブリッドクラウドは「あらゆるアプリ、あらゆるクラウド、あらゆるデータ、あらゆる場所」の原則に基づいて構築されたサービス化のモデルです。
ハイブリッドクラウドの重要な側面は、組織がクラウドを展開・拡張する際の業務ルールやプロセスをモデル化すること、そして技術部門の負担軽減につながる運用方法の確立です。
アジャイル、DevOpsまたは統合された観点からの適切な運用モデル(SecOpsまたはDevSecOpsなど)がなければ、組織がハイブリッドクラウドモデルを組織内の文化として吸収し、長期間に渡りビジネス上のメリットを体験することはほぼ不可能です。自動化をはじめとした生産性、効率性の向上、および重要な意思決定と収益成長を目指すリアルタイム分析を業務革新・改善に活かそうとする時、差別化を生み出すのは業務プロセスの革新・改善そのものです。
積極的な差別化が実現できる業務領域を確認し、自社業務を分析する
本稿では2019年~2021年にかけて実施したハイブリッドクラウド導入プロジェクトの例を紹介します。
要素の洗い出しにおいては、プランニング、適用施策活動/運用支援、運用開始に至るまでの検討すべき内容を以下の流れで整理しています。
企画/戦略、管理、オペレーションの観点でユーザー側情報化推進、アプリケーション領域、技術領域で着手すべき項目を以下のマトリックスで対応付けを行っています。
このハイブリッドクラウド環境構築においての業務分析から始まる全活動は、単独で効果的に行うことはできません。調査、分析、垂直統合、運用、パートナーシップ、専門性、および企業文化を踏まえた全体的な実行能力等を考慮して、自社の業務分析を行った後、クラウドサービスプロバイダーを賢く選択する必要があります。
クラウドの採否が混沌かつ競争の激しい分野で成長を目指す企業にとって、その能力をさらに加速させることもあれば、減速させることもあります。これはパンデミック後、特に顕著な現象として表れています。
クラウドの賢明な選択にあたっては、積極的な差別化が実現できる業務領域の確認と、市場、競合分析、自社の業務分析を強くお薦めします。
(出典)総務省「通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
- クラウドサービスの利用状況
- クラウドサービスの効果