はじめに
タイトルにある通り、コードを実装することなくPoCを始めるためのシステム構成や設定手順について説明します。
これから書く記事の構成は以下のようになっています。
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ノーコードではじめるPoC(準備、システム概要・構成編)※この記事
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ノーコードではじめるPoC(Azureへ接続編)
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ノーコードではじめるPoC(Azureでデータ可視化編)
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ノーコードではじめるPoC(Azureからリモート制御編)
この記事では、PoCを行うにあたって準備するもの、PoCを実現するためのシステム概要・構成について記載します。
今回紹介するPoCのシステムは?
IoTデバイスが受信したGPS測位データをAzureへ送信し、Azureを通してそれらのデータを可視化することで現在地やトラッキングの確認が行えるシステムです。
PoCをはじめるにあたって準備するものは?
準備するものは下記2つのみです。
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Acty-G3(GPSトラッカー/IoTゲートウェイデバイス)
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Azureポータルアカウント
用語集
用語 | 要約・説明 | 出展元リンク |
---|---|---|
Azure IoT Hub | IoTアプリケーションとIoTデバイスの双方向通信でメッセージハブの 役割を担うサービスで、通信プロトコルはHTTPS/AMQP/AMQP over WebSocket/MQTT/WebSocket経由のMQTTをサポートしています。 (2021.6.22現在) |
Microsoft Azure IoT Hub ドキュメント |
Azure IoT Hub Device Provisioning Service(DPS) |
DPSを使用することで、ユーザ操作なしで適切なIoT HubへJust-In- Timeプロビジョニングを行うことができます。 DPS を使用すると、膨大な数のデバイスを安全かつスケーラブルな 方法でプロビジョニングすることができます。 |
Microsoft DPS ドキュメント |
Azure Stream Analytics | Azure IoT Hubなどを入力データとしてリアルタイム分析を行い、 処理結果をDatabaseやStorageやPower BIなどに出力する サービスです。 |
Microsoft Azure Stream Analytics ドキュメント |
Azure IoT Central | エンタープライズレベルのIoT ソリューションの開発、管理、および 保守の負担とコストを削減するIoTアプリケーションプラットフォーム です。 Web UIを使用して、デバイス接続、デバイスの状態監視、イベント ルールの作成が行え、何百万ものデバイスとそのデータを管理する ことができます。 |
Microsoft Azure IoT Central ドキュメント |
Azure SQL Database | Azure SQL Databaseは、アップグレード、修正プログラムの適用、 バックアップ、監視などのほとんどのデータベース管理機能をユーザー の介入なしで処理するデータベースエンジンです。 |
Microsoft Azure SQL Database ドキュメント |
Azure App Service | Azure App Serviceは、Webアプリケーション、REST API、および モバイルバックエンドをホストするためのHTTPベースのサービスです。 開発には、.NET、.NET Core、Java、Ruby、Node.js、PHP、 Python言語が利用できます。 |
Microsoft App Service ドキュメント |
Azure Certified Device | Azure Certified Deviceプログラムは、Azure 上で実行するように 構築された IoT デバイスの差別化、認定、および販売促進を可能 にする無料のプログラムです。 |
Microsoft Azure Certified Device ドキュメント |
IoT プラグ アンド プレイ | IoT プラグ アンド プレイはAzure Certified Device認定にデータ 通信が追加された認定で、デバイス モデルに基づいてDigital Twin Definition Language バージョン 2(DTDL)とインタラクションが 検証されます。 |
Microsoft IoT プラグ アンド プレイ ドキュメント |
Power BI | AzureやOfficeと連携してデータに接続し、モデル化やビジュアル化 を行い、レポートを作成するサービスです。 |
Microsoft Power BI サービス概要 |
どのようなシステム構成でPoCが実現できるの?
今回紹介するPoCの内容を実現可能なシステム構成例を3つ挙げます。
システム構成例(1):Azure IoT Centralを用いたシステム構成
Azure IoT Centralの機能を用いたシステム構成を下図に示します。
PoCを始めるにはAzure IoT CentralとIoT デバイスのセットアップを行う必要があり、大まかな手順は以下の通りです。
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Azure IoT Centralアプリケーションを作成する
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IoT CentralのWeb UIでデバイス*1を追加する
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IoTデバイスのセットアップ(Azure IoT Hubへの接続設定)を行う
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Azure IoT CentralアプリケーションのWeb UIでテレメトリデータの受信を確認する
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Azure IoT CentralアプリケーションのWeb UIでダッシュボードに表示したグラフを設定する
*1: パブリックリポジトリに登録されているIoT プラグ アンド プレイ認定を受けたデバイスを入手し、IoT Centralにデバイスを追加して利用することで、IoTデバイスとクラウド間の通信は定義に則って行われるため、プログラミングやシステム開発を行うことなくPoCを始められます。
システム構成例(2):Azure IoT Hub+Stream Analytics+Power BIのシステム構成
Azure IoT Hub+Stream Analytics+Power BIの組合せを用いたシステム構成を下図に示します。
PoCを始めるには必要なAzureリソースを作成して設定を行う必要があり、大まかな手順は以下の通りです。
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Azure IoT Hubを作成する
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Azure IoT Hubにデバイスを追加する、またはAzure Device Provisioning Service(DPS)の設定を行う
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IoTデバイスのセットアップを行う
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Azure Stream Analyticsを作成する
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Azure Stream AnalyticsのInput/Query/OutputをWeb UIで設定する
- Input: IoT Hubが受信したテレメトリデータを入力として設定する
- Query: SQL文で受信したテレメトリデータから必要なデータ、および項目に絞り込む
- Output: Queryで絞り込んだデータ/項目の出力先を設定する ※ここでは出力先をPower BIに設定
※Queryを記載しながらテレメトリデータの受信を確認 ※QueryはSQL文を使用するので実装に近いセットアップ手順が含まれる
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Power BIでレポートを作成する
※Web UIの操作でレポートを作成
システム構成例(3):Azure IoT Hub+Stream Analytics+DB+WebAppのシステム構成
Azure IoT Hub+Stream Analytics+DB+WebAppの組合せを用いたシステム構成を下図に示します。
PoCを始めるには必要なAzureリソースを作成して設定・実装を行う必要があり、大まかな手順は以下の通りです。
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Azure IoT Hubを作成する
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Azure IoT Hubにデバイスを追加する、またはAzure Device Provisioning Service(DPS)の設定を行う
-
IoTデバイスのセットアップを行う
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SQL Databaseを作成する
※テーブル定義の設計が必要
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Azure Stream Analyticsを作成する
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Azure Stream AnalyticsのInput/Query/OutputをWeb UIで設定する
- Input: IoT Hubが受信したテレメトリデータを入力として設定する
- Query: SQL文で受信したテレメトリデータから必要なデータ、および項目に絞り込む
- Output: Queryで絞り込んだデータ/項目の出力先を設定する ※ここでは出力先をSQL Databaseに設定
※Queryを記載しながらテレメトリデータの受信を確認 ※QueryはSQL文を使用するので実装に近いセットアップ手順が含まれる
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App Serviceを作成する
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App ServiceにWebAppを実装する
※一般的なWebアプリケーションにおけるログイン機能などのセキュリティ設計・実装が必要
※画面構成・遷移、およびデータ可視化のレポート表示についての設計・実装が必要
システム構成によってどのような差があるの?
先ほど挙げた3つのシステム構成例について、それぞれのメリット・デメリット、システム構築の難易度について比較します。
システム構成例(1) | システム構成例(2) | システム構成例(3) | |
---|---|---|---|
メリット |
ノーコードでシステム構築ができる 簡単な設定のみでデータの可視化 |
Azure IoT Centralに比べ設定する |
Azure IoT CentralやPower BIに |
デメリット |
クラウドに独自機能を追加する |
Stream AnalyticsやPower BIの機能 |
Stream Analytics、Database、 |
システム 構築難易度 |
簡単な設定のみで即PoCが開始 |
いくつかクラウドサービスの知識が |
プログラム実装や使用するクラウド |
費用*2 | デバイス(Acty-G3)価格 Azure IoT Central 価格 |
デバイス(Acty-G3)価格 Azure IoT Hub 価格 Azure Stream Analytics 価格 Power BI 価格 |
デバイス(Acty-G3)価格 Azure IoT Hub 価格 Azure Stream Analytics 価格 Azure SQL Database 価格 Azure App Service 価格 |
*2: PoCを実施する期間を考慮してAzureサービス料金計算ツールで費用を算出できます。
次回以降の記事について
ここまで3つのシステム構成例を挙げて説明しましたが、今回の記事はタイトルにあるようにノーコードでPoCをはじめるということを目的にしていますので、次回以降の記事は【システム構成例(1):Azure IoT Centralを用いたシステム構成】について実際にシステム構築する手順を解説していきます。
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